緑の情報特版NO5

   支離滅裂!広域化政策-いよいよ最終局面に   

北九州市市民検討委員会  広域化調査チーム 青木泰

 

 法令無視も何のその

 8月31日(金)北九州市は、宮城県とがれきの受け入れについて委託契約を結んだことを記者会見した。終末の金曜日、夕方4時から行政機関として休みに入る直前である。

 翌日の報道によれば各市朝刊によれば、宮城県は、北九州市に対し、東北大震災で発生したがれきの広域処理について、8月31日業務委託契約を結び、来年3月末までに、石巻市の木くずなどの可燃物のがれき約2万3千トンを、契約額約6億2200万円で処理するとなっている。

また「県や北九州市によると、今月初旬に石巻市からがれきを搬出し、10日にもコンテナ船が宮城県を出発。1度の輸送で600~800トンのがれきを運ぶという。がれきは北九州市小倉北区の日明(ひあがり)積出(つみだし)基地ストックヤードに集められた後、市内の3工場で1日最大約110トンが焼却される。処理は17日から始まる見通し」(朝日新聞)

しかしちょっと待ってほしい、このような契約は、議会確認案件である。議会で確認されていない契約は、正式ではない、正式な契約でないものを根拠になぜ、積み出しや焼却の予定を発表するのか?このような発表自体議会と市民軽視し無視したものである。

北九州市からすれば、がれき受け入れは、宮城県や当該被災石巻市からの要請であり、胸を張って受け入れ表明する事案でなかったか?それが何故8月末日、しかも週末の16時に記者会見を開くと言ったこそこそとした対応を取るのか。

新聞を通して、北九州市のがれき受け入れは、もう決着がついた。宮城県の県議会が始まる11日の前の日の10日には、積み出しが始まるという宣言である。もうこの問題は終わったからあきらめてほしいという行政がよく使う手口である。

それにしてもなぜこの時期に発表したのか?

市民検討委員会(広域化調査チーム)とひまわりプロジェクトは、9月3日(月)に北九州市に契約の内容を明らかにし、契約の破棄を求める「質問と通告書」を提出し、記者会見を行った。

この契約自体、議会確認を経ていない以上無効であり、また8月7日に発表された環境省の「工程表」によれば、宮城県からのがれきの広域化は、5月には手を挙げていた16府県が、今は東京都と北九州市だけになっていること、広域化の必要性がなくなっていることを指摘して行った。

 9月4日、宮城県の市民から河北新報で、宮城県が9月議会にがれきの処理委託している鹿島JVなどとの契約の見直しを行うという報道がなされたという情報が入った。

 

河北新報の驚くべき情報

河北新報の報道は、宮城県からがれきの広域化は全く必要なくなったことを知らせる大変な情報だった。

この河北新報の情報が、先に知らされていれば、今回の契約報道は、新聞からの質問攻めでできなくなる。そのように予測しての8月31日急きょ契約の締結=仮契約を行ったと考えられる。

また北九州市が契約書の公表を拒んでいる中で、宮城県がアップした契約書の日付は「手書き」で8月31日となっている前代未聞の契約書である。手書きの修正個所が「8月」と「31日」になっていることを考えると、当初印字されていた「月」は、おそらく9月である。


では、宮城県が、がれきの発生量の見直しを行った後、鹿島JVと契約していた契約金額を石巻ブロックでは441億円減額修正し、これを9月議会に諮るという報道されている。

以下河北新報

がれき処理492億円減額 石巻地区と亘理、宮城県変更へ

 宮城県は3日、東日本大震災で発生したがれき総量が当初推計より大幅に減った石巻地区(石巻市、東松島市、女川町)と亘理町の処理委託契約について、契約総額の20%に当たる計492億円を減額する方針を決めた。

11日開会の県議会9月定例会に契約変更に関する議案を提出する。
 石巻地区では、鹿島東北支店など9社の共同企業体(JV)と昨年9月に結んだ契約額1923億円を、441億円減の1482億円にする。亘理町では、昨年10月の大林組東北支店など7社JVとの契約額543億円を、51億円減の492億円に変更する。
 石巻地区はがれき量を当初685万トンと見込んだが、ことし7月に精査した結果、310万トンに半減した。津波堆積物も280万トンから43万トンに減った。当初の契約額から、がれき処理費は640億円削減したが、2次仮置き場の追加や焼却灰、汚泥のリサイクル費などで199億円増えた。
 亘理町はがれき86万トンが47万トンに、堆積物が85万トンから70万トンにそれぞれ減少し、処理費自体は159億円減った。一方、石巻地区で発生したがれき処理の引き受け(36億円)や、不燃がれきの選別施設整備(57億円)などで109億円を新たに追加した。

河北新報(9月4日)

 この記事で、北九州市や東京都に関連する大問題は、2点ある。1点目は、鹿島JVが処理する石巻ブロックのがれきが、半減したということと、2点目は、それにもかかわらず、1部契約金額を増額する要件を認め、全体の減額分を抑えたということである。

<がれきの処理量の半減と広域化の必要性の消滅>

 

6月、取材で宮城県の石巻ブロックの担当者に電話した時、鹿島JVとの契約金の減額修正をいつ行うのかと質問すると、担当者は、何のことかわからず、「がれきの量が、45%になったのだから契約金を減額修正しなければ、鹿島JVにただ働きで、約2000億円(1923億6000万円)も支払うことになる。そうなれば、がれき量の見積もりを誤った環境省の責任が問われることになる。」と言ってようやく減額の必要性が分かったという状況だった。コスト意識が全く欠如していた。

それが、ここにきてようやく、宮城県ががれきの業務委託費の減額修正に取り組む、議会に提案するという報道である。がれきの見直しからすでに3か月半も経過している。この報道は、がれきの処理契約金額の変更についての報道だが、内容は、がれきの処理量が、石巻ブロックで半減したと言う重大な事実を含んでいる。

石巻ブロックは、石巻市、女川町、東松島市からなり、ここでは、一度業者に委託したがれきの処理量が685万トンから373万トンも減り、約312万トンになったということである。つまり現地でも処理するがれきがなくなっているという事実が示されている。業者は、685万トンを処理すると契約していたのだから、業者は、これだけを短期間に処理するという名目で、破砕―選別装置や仮設焼却炉のプラントを、現地の雲雀野町の2次仮設置き場に建設している。東京や北九州市の持ってくる分は、最大でも12万トンであり、鹿島JVが持つ処理能力のわずか2%の量でしかない。しかも今回373万トン当初より下方修正されたため、業者が充分処理できる量である。

広域化の必要は、この事実によって掻き消えたと言える。

この時点になってさえ、広域化を進める客観的理由は、全然存在しない。

 

 疑問と疑惑満載の北九州市への広域化―直ちにやめよ

入手した契約書を見ると、北九州市に運んで来るがれきは、鹿島JVに業務委託し、鹿島JVが委託管理している石巻市の雲雀野の2次仮置き場に保管しているものを運ぶとなっている。(委託契約書前書き)

つまり宮城県は、一度鹿島JVと言う民間企業に業務委託したがれきを、そこから2万3千トン引きはがし、北九州市に運ぶという契約である。

この契約については、数々の疑問―疑惑点が浮かぶ。

  宮城県のがれきは増加したのではなく、逆に減っている。鹿島JVに委託する量も減っているのに、なぜわざわざ少なくなったがれきを引っ剥がし、北九州に運ぼうとするのか? 

  しかも鹿島JVは、トン当たり2~3万円で、がれきを業務委託していた。

これをその数倍のコストをかけて北九州に運ぶ客観的の理由は成り立たない。(ちなみに試験焼却の時にはトン当たり17万5千円の輸送費)

  鹿島JVに処理委託したまま、そこから再委託する形で北九州市に持って行くのか?その場合委託費が2~3万円で、それ以上のコストで再委託させることを、鹿島JVは認めているのか?-そのような契約を宮城県とかわすにあたって、鹿島JVは、どのような条件を付けてきたのか?

それは、自治法上法にかなった条件なのか?

  通常がれきの処理数量が減っているのに、追加で107億円も委託費を加算することは、ありえない。

  追加分として計上している石巻市で発生したがれきの引き受け料36億円と言うのは何か?北九州市に持って行く分の加算分か?

以上